Childhood's End

映画と本の感想など

TVアニメ『六畳間の侵略者!?』(2014年)

連帯についてのアニメである。

 Netflixで配信をしていたので改めて観直し。放送当時もそうだったけど、3年経った今でも面白く観ることが出来た。あらすじをWikipedia先生から引用すると、

父の転勤によって高校入学と同時に一人暮らしをすることになった里見孝太郎は、「月5000円・敷金礼金無し」の格安物件である築25年のアパート・ころな荘の106号室へ引っ越すことになる。過去の106号室入居者は幽霊が出没するとの理由から、ことごとく短期間で引っ越してしまっていたのである。 入学式の晩、孝太郎の前にその幽霊である・東本願早苗が現れる。早苗は孝太郎に対して106号室の先住権を主張し、彼を追い出そうとする。そして、翌日には106号室の窓を突き破って自称・魔法少女の虹野ゆりかが、翌々日には畳の下から古代文明の地底人の末裔を自称するキリハが、翌々々日には転移先に指定した壁から宇宙人の神聖フォルトーゼ銀河皇国第7皇女・ティアミリスが、それぞれ理由を付けて106号室を占拠すべく乱入する。一時は地球滅亡の危機に陥るが、騒ぎを聞きつけた大家の笠置静香が介入し、圧倒的な武力を持って騒ぎを鎮圧させ、平和的に争うようにころな陸戦規定を締結させる。 106号室を争ってゲームをしているうちにお互いを認め合った孝太郎たちは、各々の敵を協力して撃退していくようになる。

 幽霊、地底人、宇宙人、魔法少女といった各勢力が、それぞれの事情で「106号室」を奪いあうバトルロイヤルものになると思いきや…あらすじにある通り武力での解決を封じられ、なんだかんだで感情的な繋がりが出来て奇妙な同士的関係を結ぶようになっていく。学園アニメでは必須科目の、部対抗マラソン大会、海、温泉、学園祭、遊園地デートを経験していく内に彼らの人間模様は緩やかではあるが確かに変わっていく。

 「106号室」を巡る戦いは次第に彼ら自身の過去と対峙となる。それぞれのヒロインが自身の敵と闘っている。それに本来であれば106号室を巡る敵だった皆が加わって一緒に闘ってくれること。

 同じ釜の飯を食って、遊んで、喧嘩して、仲直りしていくことで、最初は決して交わらないと思われた彼らの関係が絡まり合っていきある種の解決を迎えることになる。大家さんの外圧から始まった彼らの関係が変質していることが見えるのは、最終回のクリスマスパーティだろう。主人公が彼女達に仕掛けたサプライズを逆手に取り、彼女達が主人公にサプライズを仕掛ける。相手を思いやる関係になっている。

 ここで「主人公とヒロインイチャイチャしていればすべて解決する」という命題をこのアニメが提示しないのも良かった。彼らがどれだけ仲良くなっても各勢力の「106号室」に対する利害関係が消失している訳ではなかったからだ。だが、主人公と彼女達が結んだ関係性はその利害関係を政治的妥協にまで高めることの第一歩を提示したことが本作の伝えたかったテーマなのかもしれない。最近読んだ本で『謎の独立国家 ソマリランド』があり、その中でこんな話があった。 

「争いがひどいときには特別な方法がある。めったにやらないけどね。憎しみがこれ以上強くなるのを防ぐため、加害者側の一族から美しい娘を選び、被害者の家に嫁がせるんだ。嫁いだ娘は最初はものすごく辛い思いをする。(中略)でも、子供が生まれると変わる。両方にとって孫になるからね」(前掲著P447より抜粋)

 『六畳間の侵略者!?』はこれからのグローバル化社会における連帯の方法を示唆さしているアニメなのかもしれない。一緒に飯食って、喧嘩して、仲直りしてといった当たり前の事を個人間で行うことが勢力均衡を更に一段上に押し上げ、連帯を促していくことの。 

 

 

謎の独立国家ソマリランド